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国鉄・JRから離れた線路 ─ 第三セクター転換の二つの波
国鉄・JRの線路が、別の会社の線路になる。1984年の三陸鉄道に始まり、2024年の北陸新幹線の敦賀開業まで、こうした「移管」は路線データの上で52回あります。並べてみると、移管には時期も理由もちがう二つの波がありました。1980年代の、廃止されそうな赤字線を地元が引き受けた波。そして1997年からの、新幹線の開業とひきかえにJRから切り離された「並行在来線」の波です。
国鉄・JRの線路と、それ以外の線路
まず、全国の線路の長さを国鉄・JRとそれ以外に分けたグラフを見てください。国鉄・JRの線路は1981年の約20,874kmが最大で、2025年には約16,267kmです。反対に、それ以外の線路は1980年の約5,350kmを底に増え、2025年には約7,991kmになりました。
■ 国鉄・JR■ それ以外(私鉄・公営・第三セクターなど)
国鉄・JRの線路が減った分の多くは、なくなったのではなく、持ち主が変わっただけです。この記事では、そうした線路の移り変わりを追います。
第一の波(1984〜1991年):消えるはずだった線を地元が引き取る
1980年の国鉄再建法で、利用の少ない国鉄の路線が「特定地方交通線」に選ばれ、バスに替えるか、別の会社に引き継ぐことになりました(くわしくは別の記事「日本の線路がいちばん長かった年」)。鉄道を残したい地域は、県や市町村がお金を出す第三セクターの会社を作り、線路と駅をそのまま引き継ぎました。
最初は1984年4月の三陸鉄道です。国鉄の久慈線・宮古線・盛線に、建設が止まっていた区間を加えて、北リアス線・南リアス線として開業しました。国鉄の特定地方交通線を引き継いだ第三セクター鉄道として、最初の例です。そこから1991年までに、路線データの上で37の移管があり、引き継いだ線路はあわせて約1,324kmになります。
いちばん長かったのは、北海道の池北線を引き継いだ北海道ちほく高原鉄道(ふるさと銀河線、1989年)でした。ほかにも、長崎・佐賀県の松浦鉄道(1988年)、京都府北部の北近畿タンゴ鉄道(1990年)、岐阜県の長良川鉄道(1986年)、静岡県の天竜浜名湖鉄道(1987年)のように、地方の長い線が引き継がれています。
ただ、引き継いだあとも利用は減り続けました。ふるさと銀河線は2006年に、のと鉄道能登線は2005年に、高千穂鉄道は台風の被害のあと2007〜08年に廃止されています。三木鉄道(2008年)、神岡鉄道(2006年)も、今は走っていません。残った会社も、多くは国や県の支えを受けながら走り続けています。
第二の波(1997〜2024年):新幹線とひきかえの並行在来線
二つめの波は、性格がまったくちがいます。整備新幹線が開業すると、新幹線と並んで走る在来線(並行在来線)は、JRの経営から切り離すことが決まりました。新幹線と在来線の両方をJRが持つと赤字が重くなる、というのが理由です。切り離された線は、沿線の県が中心となる第三セクターが引き継ぎました。
最初は1997年10月の長野新幹線(今の北陸新幹線の高崎〜長野)の開業で、信越線の軽井沢〜篠ノ井がしなの鉄道になりました。その後、東北新幹線の盛岡〜八戸(2002年)でIGRいわて銀河鉄道と青い森鉄道、九州新幹線(2004年)で肥薩おれんじ鉄道、八戸〜新青森(2010年)で青い森鉄道の延長、北陸新幹線の金沢開業(2015年)であいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道・IRいしかわ鉄道、北海道新幹線(2016年)で道南いさりび鉄道、敦賀開業(2024年)でハピラインふくいとIRいしかわ鉄道の延長が生まれています。
路線データでは、この波の移管は15回、あわせて約935kmです。回数は第一の波より少ないのですが、引き継がれたのは東北線・北陸線・鹿児島線といった幹線で、1回あたりの長さが長いのが特徴です。特急がなくなったあとも、通勤・通学の列車や、北海道と本州を結ぶ貨物列車が走り続けています。
どちらの波にも入らない移管
二つの波のほかに、性格のちがう移管が2つあります。2006年には、JR西日本の富山港線が富山ライトレールに引き継がれました。線路の一部を道路の上に移し、低い床の路面電車が走る、日本で最初の本格的なLRT(次世代型の路面電車)として生まれ変わっています(2020年に富山地方鉄道と合併)。
2019年には、東日本大震災で被災したJR山田線の宮古〜釜石を、JR東日本が復旧したうえで三陸鉄道に引き渡しました。三陸鉄道は北リアス線・南リアス線とつながり、久慈から盛までを1本のリアス線として走らせています。
国鉄・JRから他社へ移った路線の一覧
路線データの年ごとの記録から、国鉄・JRの線路が他社の線路に変わったものをすべて並べました。路線名は、移管される前の国鉄・JRでの名前です。
| 記録の年 | 国鉄・JRの路線 | 引き継いだ会社 | 地図上の長さ |
|---|---|---|---|
| 第一の波:特定地方交通線などの転換(1984〜1991年) | |||
| 1984年 | 久慈線 | 三陸鉄道 | 25.9km |
| 1984年 | 樽見線 | 樽見鉄道 | 23.7km |
| 1984年 | 盛線 | 三陸鉄道 | 21.4km |
| 1984年 | 神岡線 | 神岡鉄道 | 19.9km |
| 1984年 | 宮古線 | 三陸鉄道 | 12.8km |
| 1985年 | 明知線 | 明知鉄道 | 25.1km |
| 1985年 | 北条線 | 北条鉄道 | 13.8km |
| 1985年 | 三木線 | 三木鉄道 | 6.6km |
| 1986年 | 越美南線 | 長良川鉄道 | 71.9km |
| 1986年 | 阿仁合線 | 秋田内陸縦貫鉄道 | 46.0km |
| 1986年 | 矢島線 | 由利高原鉄道 | 23.0km |
| 1986年 | 角館線 | 秋田内陸縦貫鉄道 | 19.1km |
| 1986年 | 高森線 | 南阿蘇鉄道 | 17.8km |
| 1986年 | 丸森線 | 阿武隈急行 | 17.4km |
| 1986年 | 甘木線 | 甘木鉄道 | 13.7km |
| 1987年 | 二俣線 | 天竜浜名湖鉄道 | 67.7km |
| 1987年 | 会津線 | 会津鉄道 | 57.1km |
| 1987年 | 岩日線 | 錦川鉄道 | 32.6km |
| 1987年 | 伊勢線 | 伊勢鉄道 | 24.6km |
| 1987年 | 若桜線 | 若桜鉄道 | 19.1km |
| 1987年 | 信楽線 | 信楽高原鐵道 | 14.7km |
| 1988年 | 松浦線 | 松浦鉄道 | 93.7km |
| 1988年 | 能登線 | のと鉄道 | 60.8km |
| 1988年 | 中村線 | 土佐くろしお鉄道 | 43.0km |
| 1988年 | 真岡線 | 真岡鐵道 | 38.0km |
| 1988年 | 長井線 | 山形鉄道 | 30.5km |
| 1988年 | 木原線 | いすみ鉄道 | 26.9km |
| 1988年 | 岡多線 | 愛知環状鉄道 | 19.5km |
| 1989年 | 池北線 | 北海道ちほく高原鉄道 | 139.5km |
| 1989年 | 高千穂線 | 高千穂鉄道 | 50.0km |
| 1989年 | 足尾線 | わたらせ渓谷鐵道 | 44.0km |
| 1989年 | 田川線 | 平成筑豊鉄道 | 26.2km |
| 1989年 | 湯前線 | くま川鉄道 | 24.8km |
| 1989年 | 伊田線 | 平成筑豊鉄道 | 16.1km |
| 1989年 | 糸田線 | 平成筑豊鉄道 | 6.9km |
| 1990年 | 宮津線 | 北近畿タンゴ鉄道 | 83.6km |
| 1991年 | 七尾線 | のと鉄道 | 46.1km |
| 第二の波:整備新幹線の並行在来線(1997〜2024年) | |||
| 1997年 | 信越線 | しなの鉄道 | 64.8km |
| 2002年 | 東北線 | アイジーアールいわて銀河鉄道 | 110.6km |
| 2002年 | 東北線 | 青い森鉄道 | 36.9km |
| 2004年 | 鹿児島線 | 肥薩おれんじ鉄道 | 118.8km |
| 2010年 | 東北線 | 青い森鉄道 | 96.0km |
| 2015年 | 北陸線 | あいの風とやま鉄道 | 88.3km |
| 2015年 | 北陸線 | えちごトキめき鉄道 | 70.6km |
| 2015年 | 信越線 | しなの鉄道 | 54.7km |
| 2015年 | 信越線 | えちごトキめき鉄道 | 44.1km |
| 2015年 | 北陸線 | IRいしかわ鉄道 | 17.7km |
| 2016年 | 江差線 | 道南いさりび鉄道 | 37.8km |
| 2024年 | 北陸線 | ハピラインふくい | 88.2km |
| 2024年 | 北陸線 | IRいしかわ鉄道 | 46.4km |
| そのほかの移管 | |||
| 2006年 | 富山港線 | 富山ライトレール | 7.9km |
| 2019年 | 山田線 | 三陸鉄道 | 52.1km |
「記録の年」は、国土数値情報の年ごとの記録で、はじめて新しい会社の線になっていた年です。実際の転換日とは1年ずれることがあります(たとえば由利高原鉄道は1985年10月の開業)。長さは地図の上の線の長さで、営業キロとは少しずれます。同じ年に2つの会社に分かれたものは、会社ごとに1行にしています。
この記事の数字について
- 線路の長さと移管の年は、国土交通省「国土数値情報(鉄道時系列データ)」の年ごとの記録から数えました。同じ場所の線路が、次の年の記録で別の会社の線になっていたものを「移管」としています。
- 自動の判定で「廃止」とされていた2件(2010年の東北線の八戸〜青森の青い森鉄道への移管と、2024年の北陸線の大聖寺〜金沢のIRいしかわ鉄道への移管)は、確かめて移管に直しました。2024年のIRいしかわ鉄道の長さは営業キロ(46.4km)です。
- 第一の波には、特定地方交通線ではない七尾線の和倉温泉〜輪島(1991年、のと鉄道へ)も入れています。七尾線の電化にあわせて、電化しない区間を切り離したものです。
- 移管のあとで廃止された線(ふるさと銀河線など)も、移管の記録としては一覧に残しています。
あわせて見る
出典・参考
- 国土交通省「国土数値情報(鉄道時系列データ)」
https://nlftp.mlit.go.jp/ksj/gml/datalist/KsjTmplt-N05-2024.html - 日本国有鉄道経営再建促進特別措置法(国鉄再建法、1980年)
- 整備新幹線の着工に関する政府・与党の申し合わせ(並行在来線の経営分離、1990年)