全館空調を導入した方の多くが、最初の1〜2年は「設定温度をどうすれば快適で、電気代も抑えられるのか」がわからず試行錯誤しています。私もそうでした。
この記事では、12年間・4,380日以上スマートブリーズと付き合ってきた経験から、季節ごとの正解設定を具体的にお伝えします。過去の「失敗した設定」と「改善後の結果」を含めて正直に書きます。
- 夏に「冷房設定」を使い続けた失敗と、ドライ設定に変えた結果
- 冬の暖房設定で「18,000円請求」が来たときの原因と改善策
- 春・秋の「送風運転」の正しい使い方
- 電気代を年間で数万円節約できる吹き出し口の調整テクニック
- 太陽光発電を持っている方向けの「昼間シフト」運用法
1. 【夏】「冷房28℃」では快適にならない理由
全館空調を導入した最初の夏、私はエアコンと同じ感覚で「冷房28℃」に設定しました。結果は「なんとなく涼しいが、夜が寝苦しい」という中途半端な快適さでした。
失敗の原因は「温度」ではなく「湿度」だった
スマートブリーズは全館を一定温度に保つ能力は高いのですが、梅雨〜夏の日本では「温度」より「湿度」のコントロールが快適さを左右します。冷房28℃に設定していても、外気の湿度が高い日は室内の湿度が60〜70%まで上がり、「涼しいのに蒸し暑い」という独特の不快感が生じていました。
試行錯誤の末、2014年8月のブログにこんな記録を残しています。
我が家では夏における全館空調の設定を、普通の日は冷房28〜29℃、じめじめの日はドライ28〜29℃にしています。概ね快適に暮らせているのですが、ドライの設定についてコメントをいただいて気になったことがあり調べました。ドライ運転には「弱冷房ドライ」と「再熱ドライ」の2つの運転方法があり、東芝の全館空調マニュアルを見ると、風量自動が再熱ドライ、風量・微弱強が弱冷ドライになるとのこと。再熱は温度を下げずに湿度を下げ、弱冷は温度を下げながら湿度を下げます。そして電気代は再熱の方が弱冷より約1.5倍ほど高いそうで……我が家では高い方の再熱を使用していたのでした。 — 当時の建築ブログより(2014年8月)
正解:夏は「ドライ(除湿)」設定を基本に、風量の違いに注意する
ドライ(除湿)設定に変えたところ、設定温度は同じ28℃でも室内の湿度が下がり、就寝時の寝苦しさが劇的に改善されました。ただし「ドライは電気代が高い」という話は半分正解で半分不正確です。正しくは「風量を自動にした再熱ドライは電気代が高く、風量を弱・微弱にした弱冷ドライはそこまで高くない」というのが実態でした。同じ「ドライ」ボタンでも、風量設定によって中身が変わるというのは、導入から1年以上経ってから初めて知った事実です。
夏の各部屋の吹き出し口調整
全館空調の盲点のひとつが「使わない部屋への冷気ムダ送り」です。子供部屋や客間など、昼間ほとんど使わない部屋の吹き出し口を半分程度閉じるだけで、リビングへの冷気集中度が上がり体感快適度が増します。電気代の節約にもなります(目安:月1,000〜2,000円)。
| 設定モード | 体感 | 湿度 | 電気代(目安) |
|---|---|---|---|
| 冷房 28℃ | 涼しいが蒸し暑い | 60〜70% | 基準 |
| 弱冷房ドライ 28℃(風量:弱)✅ | 涼しくて快適 | 50〜55% | 冷房とほぼ同等 |
| 再熱ドライ 28℃(風量:自動) | 涼しくて快適 | 50〜55% | 弱冷房ドライの約1.5倍 |
| 冷房 26℃ | 寒すぎる場合も | 55〜65% | やや高い |
2. 【冬】暖房「22℃」で18,000円が来た話と、セーブ運転の意外な結末
最初の冬の衝撃:低圧電力(空調のみ)で18,000円
12年前、入居初めての12月に届いた低圧電力(全館空調専用)の請求書を見て、私は固まりました。暖房22℃設定で約18,000円。11月は11,500円だったので1.5倍強です。検針期間が前月より7日ほど長かったことと、12月の方が寒かったことを考えればこんなものかとも思いましたが、従量電灯側の電気代を合わせると、正直「高い」と感じる金額でした。
対策:昼間セーブ運転を試したら、まさかの結果に
「これは節約しなければ」と、1月から運用を変更しました。12月は22℃固定でしたが、1月はよくいる時間帯を21℃、昼間や夜中は18℃に下げるスケジュール運転に切り替えたのです。届いた明細を見ると、1月の電気代は約15,000円。12月の8割程度に減っており、「節約効果が出た!」と一瞬喜びました。
一見節約効果が出たと思いました。が、しかしです。料金明細をよくよく見ると計測稼働日が違うじゃないですか。12月は35日計測、1月は28日計測。1日単位に換算すると、12月は514円、1月は536円。使用量もほぼ同じ。うーん、節約効果はほぼなかったと言える残念な結果でした。温度を下げて節約したつもりが、再度21℃に温め直すのに大きな電力を使ったんだろうと思いますが、よくわかりません。 — 当時の建築ブログより(2014年2月)
単純な「セーブ運転」は思ったほど効かないことがある
全館空調は家全体をひとつの温度に保つ性質上、一度下げた設定温度を元に戻すときに大きな電力を使う場合があります。「昼間だけ下げれば節約できる」という個別エアコン的な発想が、必ずしも全館空調には当てはまらないというのが、身をもって学んだ教訓でした。もちろん外気温の違いなど他の要因も絡むため、これが全てのケースに当てはまるとは限りませんが、「温度を細かく上げ下げするより、無理のない範囲で一定に保つ」方が、全館空調とは相性が良いのかもしれないと今は考えています。
設定温度「1℃」の差は大きい
それよりも効果を感じたのは、こまめな上げ下げではなく「基準となる設定温度そのもの」を1℃見直すことでした。22℃→21℃への変更だけで、厚着など多少の工夫と引き換えに、年間の暖房費が数千円単位で変わってきます。「少し厚着をして21℃で過ごす」という選択肢は、快適さと経済性の両立に今も有効だと感じています。
| 月 | 設定 | 計測日数 | 低圧電力(空調のみ) |
|---|---|---|---|
| 11月 | 暖房 22℃ 終日固定 | 通常 | 約11,500円 |
| 12月 | 暖房 22℃ 終日固定 | 35日 | 約18,000円 |
| 1月 | 昼間18℃→よくいる時間21℃ | 28日 | 約15,000円(日割りではほぼ同額) |
| 4月 | 暖房 20〜21℃ | 35日 | 約8,200円 |
3. 【春・秋】「送風」の正しい使い方
全館空調で最も電気代を抑えられる季節が春と秋です。外気温が15〜25℃程度の快適な時期は、冷暖房ではなく「送風」モードを活用します。
送風+わずかな冷房で夏を乗り切る5〜6月
我が家のデータでは、5月の電気代(低圧電力)が約8,200円と年間最安値に近い月になっています。この時期は「送風」を基本に、室温が29℃を超えた日だけ「冷房29℃」に切り替えるという運用です。
・外気温15〜22℃:送風のみ(窓を少し開けても◎)
・外気温22〜27℃:送風+微冷房(29〜30℃設定)
・送風中でも換気機能は動いているため、空気の清浄・換気効果は維持される
窓開けとの使い分け
全館空調があっても、春秋の気持ちの良い日は窓を開けて過ごすのが体にも気分にも最高です。「全館空調を24時間動かさないといけない」という思い込みは不要です。窓を開けている間は送風モードで換気だけ続けておけば問題ありません。
4. 太陽光発電がある家の「電気代最小化」運用法
我が家のように太陽光発電がある場合、全館空調の運用に「昼間シフト」という考え方が加わります。
卒FIT後は「自家消費」を最大化する
FIT期間(買取単価42円)が終了した後は、太陽光で発電した電気を売っても7〜9円しかもらえません。一方で、電力会社から電気を買うと30〜40円/kWhかかります(現在)。つまり、発電した電気は「売る」より「自分で使う」方が圧倒的にお得なのです。
5. 12年使って気づいた「地味に効く」テクニック3選
①吹き出し口の向きを季節で変える
冷気は下に溜まり、暖気は上に溜まる性質があります。夏は吹き出し口を水平〜やや上向きに、冬は斜め下向きにすることで、体感温度が1〜2℃改善されます。月に一度調整するだけで効果があります。
②就寝時は1℃下げて加湿器を使う
冬の就寝時、全館空調だけだとどうしても乾燥しがちです。設定を21℃に下げた上で加湿器を寝室に置くと、保湿効果でかえって暖かく感じられ、翌朝の喉の不快感も減ります。電気代も少し安くなる一石二鳥の方法です。
③フィルターマークが出たらすぐ掃除する
フィルターが目詰まりした状態で運転し続けると、コンプレッサーへの負荷が増えて電気代が上がります。また、機器の寿命も縮めます。リモコンに「フィルターマーク」が点灯したら、2週間以内に掃除機で吸い取る習慣をつけましょう。これだけで機器の寿命が延び、電気代も安定します。